胡蝶蘭を車や電車で持ち運ぶには?花を傷めない固定と温度管理のコツ

お祝いの席に胡蝶蘭を自分で持っていくとき、車に積んで大丈夫か、電車に乗せて大丈夫かと迷いますよね。
車に置きっぱなしにしたり、鉢を傾けたりして、届く前に花を傷めてしまう方も少なくありません。
フラワーギフトコーディネーターの山本緑です。
胡蝶蘭は、包み方と固定の仕方と温度の3点を押さえれば、自分の手でも傷めずに運べます。
この記事では、車と電車それぞれの運び方、夏冬の注意点、宅配に切り替える目安をお伝えします。

胡蝶蘭を自分で運ぶ前に知っておきたいこと

花びらは「こすれ」と「圧迫」に弱い

胡蝶蘭の花びらは薄く、何かに軽く触れただけで色が変わったり、跡が残ったりします。
茎も長く伸びているので、鉢が少し傾くだけで、花が座席や箱の壁に当たってしまいます。

私がこれまで見てきた傷みも、大きな衝撃より、運んでいる間に花が何かに当たり続けたケースのほうが目立ちました。
自分で運ぶときは、「倒さない」「花に何も当てない」の2つを最優先に考えてください。

温度の目安は18℃と7℃

温度については、みんなの趣味の園芸(NHK出版)の解説が参考になります。
コチョウランは温度で育てる──覚えておきたい3つの温度と生育適温では、次の3つの温度が挙げられています。

温度コチョウランの状態
18℃以上最低温度をここに保てば、年間を通して順調に成長する
15℃以上11月以降の花茎が伸びる時期に、この温度を保てば花が咲く
7℃以下確実に具合が悪くなる

運ぶ時間は数十分から数時間ですから、7℃を一瞬下回っただけで枯れるという話ではありません。
ただ、真冬の屋外や真夏の車内は、この範囲から大きく外れやすい場所です。
そこにいる時間を短くすることが、持ち運びの温度管理の中心になります。

車・電車・宅配、どれで運ぶか

運び方の選択肢は、大きく3つあります。
胡蝶蘭のギフト店Flower Smith Giftのもらった胡蝶蘭の持ち帰り方は?手段別の梱包方法と気をつけるべきポイントを参考に、私の現場感覚も加えて整理すると、次のようになります。

手段向いている鉢良いところ気をつけたいところ
車どのサイズでも温度を管理しやすく、花が傷みにくい大きい鉢は積み込めないことがある
電車・バス大輪2本立て以下、ミディ、ミニ車がなくても運べる混雑時は他の乗客の迷惑になる
宅配大輪3本立て以上など自分で運ぶ手間がなくなる個人発送は断られる場合がある

同じ店の案内では、大輪の3本立て以上だと、軽自動車やセダンには積みにくいこともあるとされています。
大きな鉢を車で運ぶ日は、事前に鉢の高さと荷室の高さを測っておくと当日あわてずに済みます。

運び始める前の準備

花を和紙や不織布でふんわり包む

車でも電車でも、まず花全体をやわらかく包みます。
胡蝶蘭園.comのもらった胡蝶蘭の持ち帰り方でも、お花を和紙などでやわらかく包んで保護するよう案内されています。

コツは、きつく巻かないことです。
花びらを押しつぶさないよう、空気を含ませるくらいのゆるさで、花の周りをふわっと囲みます。
薄紙や不織布を縦に巻いて、上と下を軽くねじって留めておくと、運んでいる途中でほどけにくくなります。

鉢がぴったり入る箱を用意する

車で運ぶなら、鉢がぴったり収まる段ボール箱があると安心です。
準備の流れは、次のとおりです。

  • 鉢がちょうど入る大きさの段ボール箱を選ぶ
  • 鉢と箱のすき間に新聞紙を詰めて、鉢が動かないようにする
  • 支柱がぐらついていないか、出発前に指で確かめる
  • 蓋は花に触れない高さで軽く留めるか、蓋をせずに使う

箱がなければ、スーパーの空き箱でもかまいません。
大切なのは、走行中に鉢が動かないことです。

立札とラッピングを外して高さを抑える

Flower Smith Giftの案内によると、立札やラッピングを外すと、高さを10〜20cmほど抑えられるそうです。
車の荷室や電車の網棚まわりの余裕がないときは、外せるものを外すだけで運びやすさが変わります。

お祝いの立札は、別に持っていって、渡す直前に付け直せば大丈夫です。

車で運ぶときのポイント

積む場所は後部座席の足元か荷室

車で運ぶときは、後部座席の足元か、荷室に箱ごと積みます。
運転席の横や座席の上は、急ブレーキで鉢が倒れやすいのでおすすめしません。

箱をシートベルトで固定する方法もあります。
花の上に他の荷物を載せないことだけは、必ず守ってください。
荷室に積むなら、真夏や真冬はトランクよりも空調の届く荷室のほうが安心です。

走り出したら、ブレーキとカーブをおだやかに

鉢は箱の中で固定していても、急ブレーキや急カーブでは花が揺れます。
胡蝶蘭を乗せている間は、普段より少しだけ車間距離を空けて、ゆっくり減速するくらいがちょうどいいです。

段差の多い道や、未舗装の駐車場も、できれば避けたいところです。
着いたら、花に触れずに、鉢の底を抱えて降ろしてください。

停車中は、車に置いたままにしない

いちばん気をつけたいのは、途中で寄り道をして、車の中に胡蝶蘭を置いていくことです。
車内は、想像以上に短い時間で高温になります。

JAFが行った真夏の車内温度(JAFユーザーテスト)は、2012年8月に外気温35℃の晴天で、車内を25℃にそろえたミニバンを4時間ほど駐車して調べたものです。
車内の最高温度は、次のとおりでした。

  • 対策なしの黒い車で57℃
  • 対策なしの白い車で52℃
  • サンシェードを付けた車で50℃
  • 窓を3cm開けた車で45℃

エンジンを止めて15分で、熱中症の指標が危険なレベルに達したとも報告されています。
10年以上前のテストですが、サンシェードや窓の隙間では大きく変わらないという結果は、今も参考になります。

ですから、寄り道は先に済ませて、胡蝶蘭は最後に届けるのが基本です。
どうしても車を離れるときは、鉢ごと持って降りてください。

電車・徒歩で運ぶときのポイント

鉢の底を抱えて、縦のまま持つ

電車やバスで運ぶなら、鉢の底のほうを両腕で抱えるようにして持ちます。
花や茎を持って支えるのは、折れやすいのでやめましょう。

包んだ花の上から紙袋に入れて、鉢が縦のまま立った状態を保つと、持ちやすくなります。
先ほどの表のとおり、電車で運ぶのは大輪2本立て以下、ミディ、ミニのサイズまでが現実的です。

混雑する時間帯を外して、座席には置かない

朝夕のラッシュ時は、他の乗客に花が当たりやすいだけでなく、押されて鉢が傾くこともあります。
お祝いの席の時間に余裕があるなら、早めに出て、空いている時間帯に乗るのが安全です。

座席に鉢を置くと、走行中の揺れで倒れることがあります。
空いていても、抱えたまま立って乗るくらいの気持ちでいてください。

乗り換えと歩く距離を下調べしておく

電車で運ぶときは、乗っている時間より、乗り換えと駅からの徒歩のほうが大変です。
階段しかない乗り換えや、長い歩道橋は、前もって地図で確かめておきましょう。

雨の日は、紙袋の上からもう一枚、花が濡れないように袋をかぶせます。
駅から届け先までが遠い場合は、最後の区間だけタクシーを使うのも一つの方法です。

夏と冬で変わる注意点

夏は暑さと冷房の風に気をつける

夏は、車内の暑さばかりに目がいきますが、冷やしすぎにも注意が必要です。
冷房の吹き出し口が花に直接向いていると、花が傷みやすくなります。
先ほどの温度の目安からも、18℃を大きく下回るような冷やし方は避けたいところです。

車に乗る前に、エアコンで車内を人が快適な温度まで下げておくと、胡蝶蘭を乗せた瞬間の温度差が小さくなります。
屋外で待つ時間も短くしたいので、鉢を運び出すのは、車のエアコンが効いてからにします。

冬は外気にさらす時間を短くする

冬は、玄関から車までの数十秒も、外気にさらす時間になります。
花を包んだ上から、さらに段ボールや毛布で全体を覆うと、冷たい風が直接当たりにくくなります。

車は先にヒーターをつけて、車内を暖めておきます。
温風が花に直接当たると今度は乾燥してしまうので、吹き出し口は足元に向けてください。

駅のホームで電車を待つ時間も、冬は長く感じます。
屋内の待合室があれば、そこで待つほうが安心です。

無理せず宅配に切り替える目安

3本立て以上や、乗り継ぎが多い移動

大きな胡蝶蘭を電車で運ぶのは、正直なところ、私はおすすめしません。
花が高くて、手が塞がって、周りの人にも気を遣うので、届けるころには気持ちに余裕がなくなってしまいます。

乗り継ぎの多い移動や、駅から遠い届け先の場合は、最初から宅配を選んだほうが結果的にきれいな状態で届きます。

個人からの発送は断られることもある

自分で梱包して宅配便に出そうとしても、個人からの胡蝶蘭の発送は宅配業者に断られる場合があると、Flower Smith Giftは案内しています。
料金も、同店の目安では1,500〜3,000円ほどかかるとされています。

自分で運ぶのが難しいと感じたら、花屋さんに届け先への直送を頼むのが確実です。
また、無事に手渡したあとは、「直射日光とエアコンの風が当たらない場所に置いてください」と一言添えておくと、その後も長くきれいに咲いてくれます。

まとめ

胡蝶蘭を自分で持ち運ぶときに押さえたいのは、次の点です。

  • 花は和紙や不織布でふんわり包み、鉢は箱でしっかり固定する
  • 車は足元か荷室に積み、停車中に置きっぱなしにしない
  • 電車は鉢の底を抱えて縦のまま持ち、混雑する時間帯を避ける
  • 夏は冷房の風、冬は外気にさらす時間に気をつける
  • 大きな鉢や乗り継ぎが多い移動は、宅配や花屋の直送に切り替える

私も配送の仕事を通して、無事に届いた胡蝶蘭を前に、贈り主さんがほっとした顔をされる場面に何度も立ち会ってきました。
自分の手で運ぶ胡蝶蘭は、それだけで気持ちの込もった贈り物になります。
準備に少しだけ時間をかけて、大切な一鉢をきれいな状態で届けてください。